◆ 6月号 『デフレの刷り込み』
【デフレの刷り込み】
“買い物難民”という言葉をご存知ですか。文字どおり、買いたくても、買えない人たち、とい うことですが、買えないといっても、お金がないからではなく、買える場所がない、というこ とのようです。
売る側からすれば、なかなか「買ってもらえない」状況で、これはどういうことでしょう。 過去に、いたるところに大型小売店舗とよばれるスーパーが進出した時期があり、このあおり で、昔から地元にあった小さな店、これが集まった商店街が、姿を消しました。
そして今度は、その大型小売店舗が、インターネット等の無店舗小売業者の攻勢や、同業他社 との安売り競争により、今度は数多くの大型小売店舗が淘汰されてきているのです。 そして、地元にその大型小売店舗が1 軒しかなかったような地域で、店舗のリストラ、再編に より、その一軒が消えてしまい、ネットや通販という手段をもたない、高齢者層が、買い物が できなくなってしまった、ということなのです。
そして、こういう市場にいち早く目をつけた町の電器店があります。安売り合戦に明け暮れ、 段々と疲弊していく大型量販店を尻目に、安定的な売上を確保し、さらに業界では突出した粗 利益率をほこっています。
この電器店は、「指名買い」していただくために、電球一個でもお客様のところへとんでいく、 といいます。そこで、最新式の電化製品の使い方や、“いまさら聴けない”というような高齢 者ならではのニーズに応えるなかで、圧倒的な支持を集め、他よりも高くても買ってもらえ る、価格競争からは、抜け出した特別な存在になっています。
ここで注目すべきなのは、高くても、買っていただける客層が存在する、ということです。 少しでも安く、と売る側の方が、潜在的に考えてしまっている、ということはないでしょうか。
お客様に本当に喜んでいただけるとき、自然に企業にとっての『適正価格』が実現されるよ うです。
2012年 7月 25日